港区男子の見解

港区男子が個人の見解を交えて、現地から最新の情報をお届けします

なぜ9割の投資家は負けるのか?

投資では、大きく言うと上がるか下がるかの二択なので、適当にやっても勝率5割になるはずです。なのになぜ一般的に9割の投資家は負けると言われているのでしょうか?

 

私も長年疑問に思っており、なんとなく理由は察していたのですが、今回、『図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて』を読んでかなり腑に落ちました。概要をまとめます。

www.amazon.co.jp

 

まずランダムウォーク理論について。

以下3つの条件が成り立てば、新しい情報はすぐに価格に織り込まれてしまい、次の価格変動は予想のつかない新しい情報によってのみランダムに発生するので、投資分析が無意味になる、サルでもスーパー投資家になり得る、という理論です。

1、相場を変動させうる情報は、瞬時にマーケットに広がる

2、売買に際して、税金や手数料などはかからない

3、すべての投資家は、金銭的利益を最大化するよう合理的に行動する

 

実際には完全に1〜3は成り立たないので、マーケットにわずかに残る、ランダムではない非効率な部分に焦点を当てて、期待リターンを高めていくことになります。

 

ここで、このマーケットの非効率の最大の発生原因は、人間心理に潜む非合理性だとされます。

  • コインの表が10回連続出たら、次はさすがに裏が出るだろうと、50%の確率を心理的に歪めてしまう
  • A株に1000円で買い注文を出してたが、あれよと1050円に値上がりしていった。このままだとさらに買い遅れてもっと値上がりすると焦り、1060円で買った。こういう連鎖で相場が適正な価格から押し上げられた
  • 一般的な人間は同額の利益から得る満足よりも、損失から受ける苦痛のほうが大きい
  • 損失が膨らむと、追加で損失が発生する苦痛の増加よりも、損失が減ることによる苦痛の解消のほうが効果が大きくなる(損きりせず塩漬けしがち)

 

いろんな記事でよく見る話ですし、実感的にも納得できるでしょう。

これに当てはまらない、感情を排して冷徹になれるサイコパスには実感できないでしょうが。

 

人間の心理には、効率的市場仮説で仮定されてるような合理的な心理構造は存在せず、明らかに特定のバイアスを持って常に傾いてるということです。

リスクを過度に恐れ、コンセンサスへの依存によって小さく買って大きく負け、情熱的正当化によって必要以上の損失を被ります。

投資家は、経済学的には合理的でなくても、人間の行動としては極めて自然な行動をとります。

これがマーケットに非効率を生みますが、本来非効率にかけてプラスの期待リターンを生み出すべきなのに、真逆の行動をとってることになります。

つまり、人間はもともと投資で負けるようにできているわけです。

 

もちろん、多くの投資家が負ける分は誰かの利益になっていて、それが勝ち組みの投資家です(サイコパスや洞察深い人など)。

彼らが多数派を占めるようになれば、彼らの期待リターンの源泉である非効率が消滅してしまうから、勝ち組み投資家は常に少数であることがマーケットの基本構造になります。

 

それでは、非効率にかけてプラスの期待リターンを生み出す、つまり勝ち組み投資家になるにはどうすればいいのか?

本では以下3つのパターンが紹介されてます。

1、ダイナミックアプローチ

2、リスクプレミアム

3、アービトラージ

 

1、ダイナミックアプローチ

  • 人間は将来予測が苦手→事実分析と切り離した将来予測

先行性や速報性を重視し、データ間の食い違いなどわずかな兆しに注目する。マーケット情報を最大限に活用する。

  • 相場は変化分に反応する→キーファクターを中心としたシナリオ分析

このために、原油とか、各国の債権とか政治動向など様々なキーファクターについて注意を払う必要があるらしい。当たり前のことだが、ハードルは高い。

  • 不確実性のせいで、正しい将来予測は存在しない→新しい情報に基づきシナリオをメンテナンスする仮説検証型シナリオアプローチ

新しい情報が入ってくれば、シナリオは変化してくるので、事後の検証と修正が重要な意味を持つ。これも当たり前のことだが、ハードルは高い。

 

ダイナミックアプローチと反対のやり方であるスタティックアプローチの例で書くと、速報性の低い経済指標と相場の動きを見比べた場合、相場のほうが一足早く動いてることが多く、経済指標分析は不発に終わることが多い。

こうならないようにもっとダイナミックに動こうということだが、本が書かれた2005年よりも今はIT取引が発達していて、もう厳しい手法かも。

しかし仮説を持ってシナリオを検証する姿勢はいつの時代でも投資家に必要な資質だろう。

 

2、リスクプレミアム

リスクの高い投資対象ほど期待リターンが高くなる。人間の心理構造からは逆の行為をしなければならない。

バフェットの投資理論は突き詰めて言えば、『大きなリスクプレミアムを織り込んだ優良銘柄に長期投資せよ』ということらしい。

宝くじを発行する国家と同じように、十分なリスク分散ができれば収益化の確度が高くなるという性質がある。

しかし分散するとせっかくの高い期待リターンが薄まってしまうので、難しいところ。

リスクプレミアムには好況と不況と同様の周期性がある。長期投資をして1サイクルを乗り越えたところではかなりの確率で利益を残せることになる。

景気循環は3~5年程度から50~70年程度まで様々。気の長いものになる。

これに適してるのは常に稼ぐ必要のあるプロよりも個人投資家である。

 

3、アービトラージ

マーケットに生じる歪みから、リスクほぼなしで収益を上げること。

機会が少ないし、実行に要する高度な分析テクニックとインフラ作りも大変だし、ということでガチプロ以外にはオススメできない。省略。

 

 

ということで、人間は心理的にもともと投資で負けるようにできているということでした。

その対策として本書では3つの方法を紹介してましたが、1と3は王道だが投資の実力そのものが問われてハードルが高いです。

2の長期投資がオススメではないでしょうか。本書ではゼロサムどころか手数料とかでマイナスサムみたいな感じで書かれてましたけど、株とかなら経済成長で全員勝つこともあるし、実際長いスパンで見たらずっと保持してたらみんな勝ってますし。

 

あと、心理的に自然なことをやると負けるメカニズムがわかったので、あえて心理的に不自然なことをやるのがいいんじゃないかと思いました。つまり普段やってることと真逆のことを意識的にやるのです。